抱えきれない宝石。胸を掴まれるような、吸い込まれるような幻想な宝石箱。 そう。塔の天井は一面透き通ったガラス。 そこからあの騎士がいるとこまで続く塔の先から見える、輝かしい空。まるで大きな、大きな望遠鏡。 塔をすり抜けてくる光は、昼間は海底には眩しすぎるのだけれど、 夜にはそれが優しい月と星の光に包まれ、部屋には一面お星様が揺蕩うように映ってた。 その優しい光で、部屋の水晶やガラス片がとっても高い宝石よりも綺麗に見えたわ。まるで違う世界。夢の世界みたい。 部屋の一つの石盤に書いてあったのだけれど、この塔の部屋には名前があったの。  『眠りの部屋』 夜になると掴めない宝石が帰ってきて微睡む場所だから。    地面が息をして、空気が浮けば宇宙で呼吸するように見える、とても幻想的な空間。   きっと、ここで歌えるとしたら幸せね。だから、私は、そっと声を出すの。今もレンズを護る黒い騎士との約束。 精一杯の夢を詰めて、優しい子守歌を。 ゆるやかに響く声が、どうか届いていますように。そう願うだけ。