* とある語り部の話。


さて、今日はある王国について説明しようか、
そこは王制が敷かれた国であり、民は国王のものであると。
民は国王のものである限り、保護を約束される。

そんな言葉上は優しい国であるが、国民は幾つかの階級に分けられている。
階級は王族、貴族、騎士、上位一般、一般、下位一般と大まかには6つ。
王族は城に住まい、貴族は城から程近い上流区域といわれる場所に。
そして上流区域を覆うように背の高く分厚い壁があり、そこには幾つかの門がついている。
門には番人が立ち、門を挟むように高位騎士達の住居が構えられており、万全の体制をとられていた。

それは、上流階級では無いものが、勝手に上流階級区域に入らぬよう。
また上流階級の大切な姫達が花盗人に盗られたり、無断で逃げ出したりせぬように。

上流区域より外は一般位の区域であり、そこには位による明確な区域分けはされていない。
特殊な位を貰っていない一般の騎士も一般位の区域で各々好きなところに住んでいるようだね。

しかし、それは表の顔というもの。
実際は下位一般などは一般位と一緒に暮らすことなど到底叶わない。
スラムと言われてはいないが、事実スラム街のような場所へと押し込まれている。

生まれた家の位というもので運命が左右されてしまうのはいつの世だって同じこと。
優しい国は冷たい国の顔も持つということだ。
中には、そんな階級を無視する稀有な存在もいるからこそ、私は見ていて楽しいのだけれどね。

確かな思いがあれば、階級などどうにでもなってしまうものなんだよ。





もう一つ話をするとしたら、この国にある王の花嫁についてかな。

王位を継ぐ者。即ち王の子が産まれた日を始まりとして、
以後5年の間に貴族の中から産まれた女子から選ばれるという3人の純潔の娘。

それは地位を約束する代わりに未来の王に娘を捧げるというもの。


3人の娘は、王の花嫁に似合うべく聡明でなくてはいけない。
王子が選択するまで、王子以外の誰かの物になってはいけない。
その身体はもちろん。その唇。その愛しさを伝える言葉すら王子の為にある。

王子が23歳から25歳を迎えるまでの2年は王宮で暮らし、王子は娘達と交流を深める。
そして王子が25歳を迎えた時、王子は王となりは3人の純潔の娘の中から花嫁を選ぶのである。

王子に用意されるのは親からの、ただ三つだけの選択肢。

娘たちに用意されるのは、親の為ともいえる鳥籠というわけだ。

誰もが家に縛られる人形を強いられる。
上流階級とはそういうものなのかもしれないね。